山のめぐみ⑤ 栗

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10月末日、散歩の道すがら、何やら甘い香ばしい香りが漂ってきました。
なんだろう。
とろりと濃くて、甘くて、いいにおい。
糖蜜でも煮詰めているよう。

イメージは、まさに天津甘栗のそれです。
実は同じような香りを一時、胡桃の木のそばでも嗅いでおり、その時も「誰かお菓子焼いてる…?」と思ったものですが。

木の実も、熟すとこんな香りを出すのでしょうか。
この香りを体験したことのあるものが、あいにく加工品に限られるので、それが山の只中とあまりにかけ離れていて、何だか不思議な気がしてしまいます。

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栗の皮をむきながら


と、散歩途中に栗の存在を感じる季節になりましたが。
我が家の周りの栗の木は今一つ実りが良くないように思われ、スルーしていました。
そこへある日、だんなさんがよそから立派な栗をいただいてきた。
ありがたや! せっかくなので、栗ごはんにしていただくことに。

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実はすごく「面倒」なイメージがある、栗。
幼少期のわたしの栗体験は、茹で栗を包丁で切って、スプーンで掘り出して食す、というもの。
皮が硬い、実も掘り出しにくい…

でも今回やってみると、鬼皮むき、渋皮むきは予想していたよりは難業ではなく、楽~にさくさくとむくことができました。

ふやかして皮むきをするわけですが、渋皮って、ちょっとでも乾き始めると、急に包丁の手ごたえが硬くなるんですね。
逆に湿らせると、途端に柔らかく刃が入るようになる。
その変わり身に、びっくり。

出来上がった栗ご飯は、ぽくぽくと、独特の滋味と味わいで美味しかったです。
(★参考にしたレシピは、文末に紹介しています)


ごはんに入りきらなかった残りは、甘露煮にして。
ごちそうさまでした。

大昔の人と栗


栗、東北の山々の、大きな秋の恵み。
縄文の昔、それより大昔から食べられていたようですが、今でもお菓子になったり好まれている味ですね。
味覚がこんなに多種多様でゴージャスになった現代(お砂糖が、各種フルーツが、スパイスが、毎日手軽に大量に口にできる時代です)、それって考えたらすごいことではないかと思うのですが。

こうして改めて向き合ってみると、栗の実って、思ったほど手がかからず、とても美味しいものなんだなと思いました。
あく抜きも、そんなに大変でなさそう…実際、わたしは上記の栗ご飯をあく抜きせず作ってしまいましたが、十分美味しかったのです。

青森の三内丸山遺跡(縄文時代)からは、集落周りに栗がたくさんあったことが分かるそうですが。
うーん。
この美味しさは当時の人たちにとっても、きっと重要な生きる糧でありながら、なおかつすごく好まれるご馳走ご飯だったんじゃないだろうか…。
食の豊かさが思われます。
もちろん、現代の栗の品種とは、またちょっと違っているかもしれないけど。

東北は農耕の文化が伝播するのが遅かった地域ですが、そもそもその必要性が薄かったとも言われます。
そりゃあ、稲作や畑作をわざわざ採りいれてそこに頼っていかなくても、自前で美味しく食べていけるなら、わざわざライフスタイルを変えないよね。

当たり前のことだけども、その土地その土地に合った文化や、産業の形があるんですよね。
その形が垣間見えると、自分はちょっと嬉しくなります。

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やっぱり便利かな、現代

以下、余談。
さて、やわらかくしたとはいえ、普段扱い慣れている野菜よりは、栗の皮は硬めです。



これがジャガイモだったなら…。


つい、ふとよぎる邪念。
ジャガイモだったら。
多分、この半分以下の時間で下ごしらえできる。

ジャガイモなんて、栗に比べたら、ずいぶん扱いやすいもんです。
皮はやわらかくて、包丁でもピーラーでもちゃちゃちゃーっと剥けてしまう。
あく抜きも不要、調理もしやすい(そういう風に品種改良されてきたのでしょうけども)。


そこで、はたと気がつく。
そうか…
南米生まれのあいつ(※ジャガイモ)が、こんなに全世界を席巻し支配しているのは、こういうことなのか! 

と、そこでものすごく納得してしまった。
いやでも本当に、先人たちの試行錯誤あって品種改良された今の食材たちって、すごくすごく食べやすいものなんでしょうね…。
一主婦としては、まずは感謝感謝です。
おかげで、赤子が寝た間にちゃっちゃとご飯が作れています。



さて、栗の季節も終わりかけ、買い物に行くとキノコやリンゴが今を盛りと棚を賑わわせています。
見事な秋の日も、色も形もなかなか記録にとどめられなかったけれど、それはまた来年かな。
そろそろ、冬になります。
「備える」季節が、今年もやってきます。

どんな季節になるかな。
楽しみなような、少し恐ろしいような。



★各種栗料理の作り方は、こちら:「白ごはん.com」様を参考にさせていただきました。
「栗ご飯」
「栗の甘露煮」


(2020年11月中旬・先日、ついに初雪がふりました。寒さのエンジンがかかってきています)

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