冬の暖

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雪国に住むようになって、感じたことの一つ。

寒ければ、心身ともに芯から弱る。
暖かいと、急に何でもやれそうな気になってくる。

私って、
ヒトのつくりって、

こんなにも現金で、単純なものなのか、ということ。




 



暖かい ということ

記録を遡ってみれば、2021年10月20日、水曜日。
天気は一日を通して雨、気温は10~14℃、湿度は62~87% *。
朝晩の底冷えがぐんと激しくなったこの日、我が家にシーズン最初のストーブお目見えがありました。
ストーブは例年11月頃から収納から引っ張り出しますが、この年は少し早めに登場した模様です。

10度もあるのにストーブ出したのか…とは自分でも思うのですが、確かに体感としては、雪が降る前の方が寒いと感じます。
家の周りに雪が積もると、所謂「かまくら効果」で空気が閉じ込められて、中の熱が逃げないでくれてまだいい。
雪が降りそうに寒いくらい、でもまだ降らないな、もうすぐ降るかなあ。
このくらいの頃は、どんどん室内の空気が抜けては、外気がすうすう吹き込んでくる。
きんと冷涼な隙間風の中にずっと居るようで、すごくつらい。

私はこの時期、よくお腹をこわします。
お腹を壊すといつも思いますが、
寒い。
って、こんなに心細いということなんだと思う。
身体の底から力がとめどなく抜けていくようで、抵抗するエネルギーがとても小さくなる。
そうすると気持ちまで鈍く力を失っていって、何もできないような気分になる。
這う這うの体で部屋に戻りこたつに潜り込み、カイロを貼って暖かいお茶をお腹に入れて、そのままじっと十五分。
そうしてやっと、落ち着きます。


はあ――――、

 あったかい。


じわじわと染み込む温度が、救世主のよう。
さっきまでの蚊の鳴くような弱弱しい気分は途端にどこかに行って、身体にどっしりと力が戻ってきます。
何て現金なのだろうか…。
でも今なら子どもたちのエネルギーも、真っ向から受け止められる。
暖かいは、偉大です。

この時季、お茶もコーヒーも、お湯でさえ、厳寒の中から戻ってきた身に湯気立つものは、すべからくご馳走です。
喉と胃を伝って身体中に染み入る、熱そのもの。
あの何とも言えない、深い味よ。
暖かいということ、それそのものがこんなにも力強いことなんだと、毎冬身をもって思い知ります。
書き出してみるとすごくシンプルな話なのですが、シンプルなことの本質をまざまざと体感できるこの暮らしを、だからこそ得難いものだと感じたりして。




石油ストーブの話

そんな我が家を暖める暖房は、二台の石油ストーブです。
対流式と呼ばれる円筒形で、上方に熱を発生させる仕組みです。
灯油を燃料とし、エアコンやファンヒーターに比べてコンセント不要な点、風が出ない点が特徴。電気代もかかりません(勿論、灯油代はかかりますが)。
積雪時は停電も起こりがちですが、電気が無くとも使える点は、災害時に強いという意味でも安心感があります。
 
 




 
居間には、やや大型の一台。
これはコロナ社製のSLシリーズで、旦那さんが独身時代から戦い続けている猛者なのでもう10年以上使っていることになります。
下記の寝室用に比べると、着火の為のつまみがやや重たい。多分今のシリーズは、もっと軽量化されているのでしょうね。
 
 


 
寝室には数年前に購入した、トヨトミのRLシリーズ。
ランタンのような姿が愛らしい。
電池で着火を促すタイプで、こちらはスイッチを回すだけで、力を入れずとも簡単に点火できます。
大型のストーブに比べるとサイズも小さいので、当然ながら機動力の点では劣ります。じわじわと時間をかけて室内が暖まっていくような感じです。


・・・
 

対流式のストーブは、暖房器具以外の面でも重宝です。
上にやかんでお湯を沸かすもできる、料理をするも可能、屋外には干せない洗濯物も、ストーブの上で部屋中に湿気を振りまきつつ、良く乾いてくれる。
私がストーブを好ましいと思うのが、この点です。
部屋を暖めるだけでなく、一緒に他の作業も進められて、何だかものすごくお得な気がするから。

そしてもう一つ、私はここで暮らすまで知らなかったのですが、ストーブのとろ火で調理したご飯って、すごく美味しい。
野菜。お肉。モツ。
素材の甘さや味わいが引き出されつつ、柔らかくホロホロ、とろける味わいになってくれます。
煮込みもカレーもシチューも、雑多に味付けして適当に調理しても、そこそこの絶品になってくれます。
火の力よ、有難う。

 



(但しストーブに乗せるのは、我が家ではステンレス製の鍋のみに限っています。材質によって熱で曲がってしまったり、錆びてしまったり等あるようですのでご注意ください)






楽できて美味しくて、言うことありません。
はふはふ。

灯油の話

ストーブをつけるには、燃料となる灯油が欠かせません。
灯油の有無は本当に死活問題です。
これが無くなっては、冗談ではなく暮らしていけない。できるだけ雪の少ない日を選んで、携行缶に詰めに行きます。その日が灯油割引デーなら、なおのこと嬉しい主婦心。

山形県に引っ越してきて、今までその意味が分かっていなかったな、と知ったことのもう一つに「原油価格」というものがあります。
というのも私は、地元では車にも乗らず、冷暖房はもっぱらエアコン任せ。
雪国に住んで初めて自家用車なしではどこへも行けない生活となり、ストーブとこたつで暖をとるようになりました。
以来ガソリンと灯油を購入するようになった訳ですが、そこで思い知るのが先の原油価格の影響の大きさです。
絶対に必要で、しかも定期的に買うものなので、嗜好品などよりもよっぽど削りにくい。そこが値上がりしてくると、生活に響くこと響くこと。

こんなこと寒冷地の人には常識なのでしょうが、それまでの自分にはそうではなかった。例えばバスやタクシーの料金が値上がりするくらいでしか、自分の生活に直結していることはあまり感じられなかったでしょう。
こんな風に肌身に迫って感じられなかった原油の価格、それにまつわる世界情勢。
都市部は便利だけれど、選択肢も沢山あるけれど、かえって物事がどこにつながっているのかが分からなくて見えにくいこともあるなあ、と思いもしました。

・・・

ちなみに、ストーブ用の灯油は携行缶で買ってくることがほとんどですが、我が家はお風呂も灯油で沸かしています。
ボイラーを満タンにするにはちょっと量が多いので、主に町内の業者さんにお願いして宅配してもらっています。その時の灯油の単価によりますが、大体1万円でちょうど、満タンになるくらい。

お世話になっているのは、宮宿にある小坂屋さん。
いつお願いしても、快く来てくださって有難い。
先日給油の合間の世間話にお聞きしたところでは、旦那さんがこの町に住むようになった頃くらいから、お世話になっているのだそうです。
その頃、旦那さんはまだ廃校になった小学校の一室を借りて、仕事をしていました。そこへ灯油を届けに来て下さっていたのだと。
ニコニコと、今でもそのことを嬉しそうに語って下さるのだから、有難いことです。


一日の終わりに

子どもたちが帰ってくる夕方、部屋はしんと冷え込んでいます。
真っ先にストーブに点火する私のわきで、寒い寒いと騒ぎながらこたつに滑り込む怪獣たち。
彼らなりに好きな定位置というのがあって、そちら側からばかりこたつ布団を引っ張るので、我が家のこたつはいつもバランスの悪いかかり方をしています。
何度注意しても怒っても、治らない。

さて、ストーブ点けた。
火のオレンジ色が、目にあたたかです。
この色が、ああもう安心だ、と思わせてくれる。
帰ってきてストーブの灯油タンクがカラだと、訳もなくがっかりする。ああ、早く部屋を暖めないとと、とにかく気がもめる。
ストーブをつけたら、やっと一安心。
子どもたちが寒さに凍えることもない。
私のお腹が痛むこともない。
あとは大体、まあ平気。

ストーブの上に味噌汁をセットして、台所で残りの夕飯の準備をします。
雨の日も風の日も台所仕事は欠かせませんが、この季節のこの場所は、刻一刻と冷気が身体に染み入ってきます。
包丁の合間、子どもたちの声からやや逃避気味に1人すする、ホットミルクの味。この上なく、美味しい。
ガラス戸の向こうはオレンジに染まり、子どもたちやテレビがガチャガチャと何やら騒いでいます。
夕飯ができるまで、あとちょっと。


・・・

 
居間は十分暖まった。
残る寝室のストーブは、就寝の2時間ほど前から点火します。
ストーブだけでは空間全体が暖まるまでに時間がかかるので、水をたっぷり入れたやかんを上にセットし、蒸気の力で部屋に熱を広げる作戦。
この作業が出遅れるとなかなか暖まらず、冷気を祓いきれていない部屋で寒い寒いと言いながら寝なくてはいけません。

ストーブの給油もやかんの水くみも毎日しなければいけないことですが、しんしんと冷えた廊下で、灯油の始末をしたり、やかんの水が満杯になるのを待っていたりする。あの数分間。
じっ、
…と、底冷えに耐える。
あの時間が地味に嫌で、食後の休憩時間をできるだけ引き延ばしてみたり、それで後で後悔したり。

ああー、
明日は旦那さんやってくんないかな。
などと、他力本願に思ったりしながら。

(…でもそんなこと言うと、他の作業で旦那さん担当みたいになってしまっていることも多々あるので、胸にしまっておいたり、しまいきれずにポロっと零してしまったりしています)


・・・


時刻は変わって、未明。
トイレに立って一度部屋を出て、再び戻ってきた時の寝室。
暖気が逃げないよう急いで扉を開けて、扉をしめた瞬間、ほっと安心する。
そこではすー、すー、と子どもの寝息だったり、旦那さんのいびきだったりがあふれていて、そこによく知っているものたちがいる、と伝えてくれます。

部屋は、やわらかいオレンジの火にぼんやりと照らされています。
その光と影を見ると、部屋が一つの小箱みたいに思えてきます。自分たちが箱に詰め込まれているような気になって、そうするとまた更に、きゅっとあたたかい気持ちになる。

ストーブの火を灯した暗闇は温かく優しく、その中にとけこんで眠るのは、私にとっての冬のささやかな、

でも確かな幸せです。











* 気象情報については、以下を参考にしています。
Yahoo!天気・災害 https://weather.yahoo.co.jp/weather/

(2023年2月)

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