宝探しの季節(春・序章)

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我が家のいちひめは、よく花を摘みます。
散歩に出る度、手の中にたくさんの種類の草花をかき集めては、家中の人にプレゼント。

タンポポ、フクジュソウ、名も知らぬ小さな花々。
花束にして、誰かにはい、どうぞ。
花生けにさして、はい、どうぞ。
もはや、彼女の習慣になっているようです。

さて、四月。
そんな人にうってつけの季節が来ました。
春です。


三月も半ばを過ぎた頃から、山の中にも浸みわたるように、日がさしこんできた。
雪がとけてきた…と思っていたら、一気に春が始まりました。
残雪の塊があっという間に小さくなり、あちこちから水があふれ出して、土の上にたくさんのものがこぼれ出る。
下草。新芽。
花のつぼみ。山菜。


さあ、
こうなると、宝探しの季節のはじまりです。



この時期の山の中は、毎日、何かが生まれてくる場所です。
めまぐるしいスピードで、なにもかもが移り変わっていく。

昨日は何もなかった場所に、今日はこんな草が、花があった。
遠くからは見えなかったのに、じっと目をこらしたら、ひょいっと見えるものがあった。


あった!

またあった!!




気づかなかったものに、ふと気づいた時って、嬉しい。
好きなものを集めていくのって、楽しい。

その気持ちは、大人も子どもも変わりません。
子は花を、大人は山菜を求めて、どんどんと。
思わず足が進んでしまう季節です。
あとちょっと、あとちょっとだけ、と言って。


黄金の色が、宝物を連想させるのかもしれない。
そう思うほど、この季節には黄色の色彩が目につきます。

フクジュソウ。
フキノトウ。
らっぱみたいな、水仙。

わけても光沢のあるフクジュソウは、色も形も、まさしく王冠のよう。
春の光を受けて、あちこちできらきらしています。



フクジュソウを見ると、「あ、もう咲いてる!春だ!」と思います。
まだ寒さの残る頃から、先駆けになって季節を告げてくれる存在です。


フクジュソウの花があまりに光沢が見事だったので、ある日いちひめと「フクジュソウヒメ」と名付け、絵を描いてみました。
お姫様の冠みたいね、と言って。
親子そろって、たいがい空想やごっこ遊びが好きな我々。


光を吸い込むみたいにして、春の野山にひっそり立っている、たくさんのお姫様たち。
そう思うだけで、ワクワクしてきます。


さて、宝物でかごがいっぱいになったら、家に帰ります。
いちひめの花束は、収穫しすぎて一輪挿しにあふれるほど。
数日の間は案外元気でいてくれて、家の中に彩りを添えてくれます。


そして先ほども触れましたが、大人は大人で、自分たちの宝物をどっちゃり小脇に抱えています。
山菜です。
フキノトウにこごみ。うるい、わらび、わさび菜。
大人のご馳走探しはまだまだここから、むしろここからが、忙しくなります。
…ということで、次回は山菜のことを書きたいと思っています。
うん、できるだけ。


いつの間にか梅も咲いて、桜も散った。
毎日何かが生まれて、一日ごとに過ぎ去っていって、春は息もつかせぬ怒涛の季節だなと思います。
美しくもあり、浮かれる気持ちもあるけど、案外ソワソワして気が揉める。
追い立てられるように、新しい季節を、かけあしでスタートしていきます。


春が、広がっていきます。


(2021年5月)

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