この町のこと

「とかいところ」の舞台となっている、山形県朝日町。
一体、どんなところでしょうか。

数年住んでみて、やっと肌身で分かるところもあり、おそらくまだまだ分かっていないこともあり。
一長一短あり、苦もあり楽もありますが、わたしが今まで住んできた中で、ここは一番自分の性にあっていて好きな場所です。

そんな朝日町のことを、わたしなりにご紹介します。
(※個人的な感想も含まれていますが、ご了承ください)

どんな町?

「はじめに」でも述べていますが、朝日町は山に囲まれ、最上川沿いに集落が存在している、自然豊かな町です。
春の花、夏の清水、秋の実り、冬の雪。
めぐる季節の中、たくさんの人たちが笑ったり泣いたりしながら、歴史と文化が作られてきた場所なんだと感じます。

人口の規模

そんな朝日町ですが、住んでいるとどこかで誰もが直面するのが、「人が少ない」ということです。
町では戦後の早い時期から人口減少が進み、早くから過疎化・高齢化の波を受け、今日に至ります。
現在の町の規模は、こんな感じです → 朝日町の人口動態(役場HPより)
2020年度末の人口は、6,476人とのことでした。

個人的には、「人が少ない」ということは
「目が届きやすい」
「問題を把握しやすい」
「相談・協力しやすい」
ということでもあると思うので、わたしは人が少ないことが一概にマイナスばかりとも思いません。

でも一方で、やっぱり人が少ないと、できないことがある。ということも、分かります。
当然のことですが、人が少ないと回るお金の額も少ない。回るお金の額が少ないと、採算がとれないことがある。
教科書やニュースを通してだけでは分からなかった、「少子化」や「過疎化」という言葉の意味するところを、身にしみて感じるときがあります。

日常の中では、目が届く、手が届く範囲の暮らしや人間関係が心地よくて、安心できる。
そう思うことの方が多い自分ですが、やっぱり現実的に実現できないサービスを前にして、残念に思ったりすることがあるのも、また事実です…。
(それを変えたかったら、自分で何かしら動いていかないといけない、ということなのだと思いますが)

移住者を増やすということが一つの課題となっていますが、ここの暮らしが物理的にも気持ちの上でも合っている。
そんな人たちの無理のない移住が、長い目で増えていけばいいなと思います。

町役場について

町に住んでいて、何かとお世話になるのが役場です。
住民票をはじめ、税金、健康福祉、農業、土木…
町に住む人や企業、公共の物事、町のあらゆることに関わっている町役場。
町議会と合わせて、人が町でより良く暮らしていけるよう、町の物事がうまく回っていくよう。各所で支えてもらっているところだと感じます。

一住民として常々思うことは、朝日町ではその時その時の状況を鑑みて、町民のニーズに合わせた対応(補助金など含む)が組まれることが多いように思え、助かるということ。
そして分からない部分への回答を含め、対応も基本的に丁寧で有難いです。
少なくとも今まで住んだことのある大型の市に比べたら、とてもとても細やかな対応だと思う。

大人数を抱えた都市部では当然、住民の要望をすみずみまで把握しきれなかったり、ひとりひとりの「?」に向き合ってはいられないと思うのですが、ここでは住民の少なさゆえに、それがよりベターな形で実現している。
この町民と行政部分の距離の近さは、小さい町ならではの「強さ」ですね。


ちなみにそんな町の経済的な部分はどうかと言えば、2021年度の一般会計当初予算は、52億7,000万円と公表されています(前年度比からは約2.6%減だそうですが、この5年ほどの推移を見ても、大体52億が平均値のようです)。

これは町民1人あたりで換算すると、約81万4,000円相当の額。
12ヶ月で割ったら、1月あたり67,800円となります。
近隣の大都市代表としての山形市は、過去5年を振り返ると大体市民1人あたりに対して75万台~76万台だそう(*注1:文末参照) なので…
朝日町って、いい線いってるんじゃないかな、と思っています。

ちいさい子どもの育てやすさ

子育てについては、他の記事でも何度か触れていますが、「目が届きやすい」ということが大きな強みとして現れていると思います。

我が子の顔を、名前を知って、きちんと接してくれる人たちの、なんと多いこと。
我が家のように大人がたった二人しかいない核家族としては、家の外部に見知った人たちがたくさんいるということは、本当にありがたいことです。
防犯の面でも、子どもたちの成長に必要なことを伝える上でも。
(そして大人が煮詰まりすぎずにお母ちゃん・お父ちゃんを続けていく上でも、色々な外部の人から声をかけてもらえるというのは案外大きかったりします…)

子どもたち同士も、学年を超えて顔見知り、友達が多い環境です。
町内に保育園が一つ、小学校が三つ、中学校が一つという環境なので、それも自然なことかもしれません。
小学校の中には一部複式学級のところもありますが、卒業生を在校生皆で送り出すような卒業式のあり方は、何だか聞いていてじんわり暖かい気持ちになりました。
(※ちなみに高校は、残念ながら町内にはありません。高校進学されるお子さんは、バスや自家用車で毎日寒河江や山形市、左沢などの学校へ通っています)

今後うちの子どもたち自身がどう感じていくかは、わかりませんが…
現時点では知ってる子とも知らない子とも、我が子が自然に声を掛け合って遊ぶ光景は、親としてはすごく嬉しいものです。


町の印象 いろいろ

山に川、ぶな林、棚田、ワイン、ダチョウ…
いろいろと魅力的なものが町にはたくさんあるのですが、そのあたりは追々各記事で追いかけてみたいと思います。

ここでは朝日町の暮らしで印象の強いことを、何点か紹介します。

朝日のりんご

朝日町の顔…といったら、やっぱり何をおいてもとりあえず、「りんご」だと思われます。

りんごは、朝日町のとても重要な特産品。
全国的にも有名で、世界にも出回っている美味しいりんごが各所で育てられています。
元々袋をかけて栽培していたりんご(ふじ)を、袋をかけずに育てることでより甘い果実を育てる…そんな「無袋ふじ」というりんごの栽培方法も、この朝日町で生み出されました。

りんご業界の中で「朝日町」は既に一つのブランドとなっており、産地を飛び越えて直接海外や首都圏で取引されたりしているそうな。
かように、ボーダーレスな実力をもつりんごの名産地です。

そんなこともあって農業は、朝日町の中でも重要な位置を占めています。
就農人口は減少しているようですが、町民の全体数が減ってるんだからそれ自体は当然といえば当然な気も…。
農家全体、特に兼業農家さんが減っていく一方、専業の農家さんは増加しているようです(*注2:文末参照)。

町の至るところに見られるりんご畑は、春夏秋冬、それぞれに美しい景色を見せてくれます。
果樹畑の中はおとぎ話の森のようで、わたしはいつも、ふらふらと迷い込んでみたいような気になります。

冬の大雪

町の暮らしのことを語るのに、「雪」は外せません。
朝日町は、雪国・山形県の中でも豪雪地帯として知られています。

(わたしは雪がほとんど降らないところで生まれ育ったので、いまだかつて経験したことのない恐ろしさですが)
一昔前は「寒さはまだいいけれど、雪は放っておいたら家が潰れて死に直結する」というものだったと聞きます(本で読んだのですが、文面から何とも言えない暗澹たる気持ちが伝わってきました…)。
土砂崩れよりも大雨よりも、毎年必ずやってくる雪の方が、ここでは何倍も恐ろしいものなのかもしれません。

今は除雪車が小まめに走ってくれるので、移動に関して冬場に困ったことはありません。
山奥の我が家は、町の中でも結構な降雪量のところですが、そこまでやって来てくれてきちんと通行できるようにしてくれるので、本当に本当にありがたい。
一方でそれぞれの家屋の管理(雪囲い、雪下ろし)は、いずこも手間がかかって大変なようです…。


生活の上では大変なこともある雪ですが、恩恵もあります。
たとえばさかんな、スキーレジャー。
朝日町の子どもたちは小学校ではスキー教室があるし、冬になると各地のナンバーが山を走り抜けてスキー場へ向かっていきます。
作物の実りも、冬の雪解け水によって支えられている。冬のあとに来る美味しいものって、たくさんあります。


そして雪が降るたびに、あ、これはここにしかないな、と思うものがあります。
この季節だからこその、この景色。
この音。
こんな気持ち。

かすかなものが、ぽつり、ぽつりと際立つ季節。



我が家の旦那さんも学生の時からこの町に通っていますが、雪の季節の間にたくさん刺激をもらって、形作ってきたものが色々とあるようです。

良くも悪くも、切っても切り離せない。
この町の暮らしにとって、雪はそんな風に関わってくる存在です。

玄人肌の人たち

これは完全にわたしの個人的な感想ではありますが、朝日町に住む人は、やたら「玄人肌」が多い…。
そんな印象を強く持っています。

料理だったり裁縫だったり、いろいろありますが、それぞれ皆さん本業でないことでも、やたらクオリティが高い。
そして、そのことに対してとても控えめです。
お話をしていると、他人に対して「わたしなんか、まだまだ」というストイックな姿勢が垣間見える気がします。
(厳しい気候風土が作り上げた、ストイックさなのでしょうか…)

こつこつ、こつこつ。
まだまだ、とにかく前向いて。
という内なる声が、聞こえてきそうな。




自分に甘いわたしですが、こうした人たちの作品や言動に触れると、何だか気が引き締まる思いがします。

まだまだ、まだまだ。
道のりは続くよ。
自分に負けてたら、いけないよ、と。

わたしが大事にしていること

移住者としての気持ち

朝日町に住んで5年生でしかないわたしですが、ここで暮らす上で、ささやかですが自分なりに大事にしていきたいと思うことがあります。
ひとつは「ありがとさま」という気持ち。
そして「自分もやる」ということです。

よく「こんなところに来て住んでくれて、ありがとうね」と言ってもらうことがあるのですが、それはそれで嬉しくてあたたかい気持ちになるのですが。
でも、そんなそんな。
むしろこちらこそです、と思います。

冬の豪雪一つとっても、除雪車が来なければうちは暮らしていけません。
子どものことでも、誰かに支えてもらってやっと生きてるな、と感じる。
(本当はそれは街暮らしでも同じことなのでしょうが)お金を出して買うサービスが無かったりする代わりに、誰かとの関係性の上に助けてもらってることを、より強く感じます。

誰かに助けてもらって、ここでの自分が成り立っている。
だったら自分もちゃんと、できるところで人との関わりを返していかないといけないな。
そんな気持ちでいます。

(…とか言いつつ、まだまだ子どもと仕事で手一杯なので、ほとんど誰かにしてもらうことの方が多いですが。苦笑)

はい。
マイペースですが、がんばります。



はるなつあきふゆ

時々、こんな風に思うことがあります。

ここに住んでいると、小さなものの変化に、ちゃんと足を止めることができる。

春が来たら、嬉しくなる。
夏が来たら、のびゆく。
秋は、支度する。
冬は、内側に向かう。

こんな風な自然の変化の流れの中に、おおむね自分の暮らしも存在していると感じます。
良い時も、悪い時も。

だから何気ない時、そこに戻って気持ちを落ち着けることができて、それがすごく自分にはありがたいことです。
ちゃんと小さなものの前で立ち止まって、考えを広げられる。
そういう場所だから、自分は自分の大事なことを大事にできる。
何が自分にとって価値のあることかを、ちゃんと自分で決められる。

ここはわたしにとって、そんな風に春夏秋冬を過ごせるところなのだと思います。
アンテナがうまく立たない日もいっぱいありますが、この気持ち、やっぱり大事にしたい。
これからも。
わたしの大事な、暮らしの場です。

子どもが大きくなって、自分たちの仕事の状況が今と大きく変化したら、また別の悩みも生まれてくるかもしれない。
今は見えていない町の顔も、見えてくるかもしれませんが。
三十代半ば、四人暮らし、自営業手伝い。
ひとまず今のわたしは、ここでとてもいい毎日を送れているなと思います。

支えてくださっている方々と家族に、改めて感謝をこめて。

参考情報

*注1
山形市「令和3年度当初予算案の概要」85ページ、「(会計別予算額(決算額)の状況)市民1人(1世帯)あたりの額」より
https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/kakuka/zaisei/zaisei/sogo/gazoufile/yosan_gaiyou/reiwa3naizikaisiryou.2021-02-08.pdf
*注2
朝日町「農家の状況」
https://www.town.asahi.yamagata.jp/portal/soshikinogoannai/seisakusuishinka/kouhoubrandgakari/10/2/13/1535.html

参考HP等

以下を参考にさせていただきました。
・朝日町役場「町の概要」
https://www.town.asahi.yamagata.jp/portal/administration/asahichonogaiyo/machinogaiyou/4234.html
山形市役所「予算の概要」令和3年度版
https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shiseijoho/sub5/yosan/b705byosan_gaiyo.html

・朝日町報「広報 あさひまち」第773号(2021年4月16日発行)


(2021年10月)

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